【あらすじ】 農村での生活を捨て、生き延びるための僅かなお金を握りしめ、大都会ダッカへ足を踏み入れた少年ラジュ。そこでラジュはダッカの路上で暮らすストリートチルドレンなどと知り合っていき、彼らの元締めであるイアシンという男のもとに連れて行かれる。イアシンはダッカの暗闇を象徴するような男であり、子ども達を使って様々な違法な商売に関与している。ラジュも自分がしている悪事に気づかないまま、イアシンの手先になっていってしまう。一方、路上に捨てられた少女ククもイアシンの餌食となり、ダッカの闇の生活に落ちていってしまう。 この物語は、アリ地獄のように引き寄せられ、逃れることのできない、ダッカに存在する闇を描いた映画である。
【この映画を制作した理由】 私たちエクマットラはストリートチルドレンへの支援活動を通じ、路上生活をしている子ども達が常に危険にさらされている事実を知り、そして一般社会に生きる人々にこの事実を知らせることこそが重要なことであると痛感しました。そこで選んだのが「映画」という手段です。「映画」は単なる娯楽ではなく、あらゆる階層の人々へ、現実の社会に繋がる強いメッセージを伝えることができる媒体であると思うからです。 この映画制作にはふたつの目的があります。ひとつは、一般社会が問題を認知し、そして自分自身の行動を改めるきっかけとなること。そしてふたつ目が、「エクマットラアカデミー」の設立資金を集めるため、というものです。 「エクマットラアカデミー」は、これまでに行ってきた青空教室、シェルターホームに続いての第三のステップとして設立を計画している、ストリートチルドレンの自立支援センターです。そのプロセスにはなるべく多くの人々の参加と賛同を得たいという願いがあります(2008年9月、建設予定地を購入し、現在建設作業中)。この映画の公開から得られる収益はこのアカデミーの設立資金に充てられます。それはつまり、観客の皆さんひとりひとりが、子どもたちがアリ地獄を脱却するというプロセスをサポートするということなのです。
【製作者からこの映画を通して伝えたいメッセージ】 私たちは、途上国における「開発」というものを考えるときに、また途上国の様々な問題の解決を考えるときに、まずその被害者をいかに変えていくか、彼らの状況をいかに改善していくかということばかりを考える傾向があります。ですが問題はそれほど単純なものではなく、本当に多くの要素と要因が絡み合ったものです。それは、私たちひとりひとりも知らず知らずのうちにその加害者となりうることを示しています。今、求められているのは、まずはこうした問題の存在を知ること、そして自らを変えていく、変革していくことではないかと思うのです。この映画が、一人でも多くの人の、そうした「きっかけ」になることを願っています。
【シュボシシュ・ロイ監督メッセージ】 映画、「アリ地獄のような街」は単なる映画ではありません。路上生活者の現実の生活、また、彼らが直面している危険などを描いています。この映画はフィクションですが、私たちは現実社会を忠実に描くように努力しました。しかし、映画を作るための道のりは簡単なものではなく、たくさんの困難や、批判、人々の冷淡な態度にも直面してきました。でも、私たちはくじけませんでした。私たちは、どんなトンネルにも出口があって、社会は変えることができる、と信じている人々に、メッセージを伝えたかったのです。「アリ地獄のような街」は、そのような人々に考えるきっかけを与え、見落としがちな問題を想起させることになると思います。私たちエクマットラは、私たちの使命が成功し、この映画が多くの人々を啓蒙して、より良い社会を築くための一歩に繋がると信じています。
【NGO「エクマットラ」とは】 エクマットラとは、ベンガル語で「みんなが共有できる1本の線」という意味。 経済的、社会的格差がとても大きい国、バングラデシュ。その格差のあいだに架け橋をかけたいとの想いからエク(ひとつの)マットラ(皆が共有する線)と名づけました。エクマットラは、青空教室やシェルターホームの運営などストリートチルドレンに対する支援と、映画制作等のメディアを通じた啓発活動、の2つを軸に活動を行うバングラデシュの民間活動団体です。2009年より映画「アリ地獄のような街」の上映キャンペーンを国内外で行い、2010年にストリートチルドレンの自立支援センター「エクマットラアカデミー」設立を目指しています。
【エクマットラ共同創設者、渡辺大樹メッセエージ】 日本での上映にあたり、日本人はバングラデシュの現状を知らなかったり、これを観てこれが全てなのか、と思ってしまうと思うんですが、社会には色んな視点があって、それを一面だけで切り取るのはメディアの怖いところで、それだけでその国のイメージを抱いてしまうのはしてほしくないことです。この映画もある一面をある一面から描いた作品なのでいろんな所から他に沢山ある面を知り、総合的にその国やその国が抱える問題などを知っていく必要があると思っています。そういった意味で、私たちの映画を通じて、こういった問題もあるんだ、ということを知ってもらいたいし、それを知った上で、どんな出口があるのか、どんな解決策があるのか、というところを本気で考えて、本気で取り組んでほしいな、と期待しています。 それからこういった映画を見て、動いた気持ち、衝撃を何かに変えた時に、それはバングラデシュやエクマットラの活動に変えるという必要は全くなくて、それぞれの舞台、それぞれの立場の中で、日本国内を変えていってもいいし、他の国で変えていってもいいと思うし、それは人それぞれだと思うので、映画を見て何か感じたら、それを何かの行動に変えていくことが重要なんじゃないかと思っています。そういった一人一人の活動が少しずつ繋がっていって、大きなムーブメントを起こすことができたらおもしろいと思います。そして最終的にそれが途上国の人達のためになっていくんじゃないかと思うので、これを一つのきっかけにしてもらいたいです。 そういった意味で、日本で上映できることをすごく嬉しく思いますし、なるべく多くの人達に観てもらいたいと思っています。
渡辺大樹(わたなべひろき)プロフィール: 1980年生まれ、横浜市出身。金沢大学文学部卒。 大学時代はヨット部に所属。タイ・プーケットで行われたヨットの国際大会時にスラムの子どもを見て衝撃を受ける。帰国後1年間バイトで貯めたお金を持ち、世界最貧国の1つバングラデシュへ。2004年にエクマットラを共同創設。 バングラデシュの問題はバングラデシュ人の手により解決するべきと考え、現在は顧問として活動を指揮し、エクマットラアカデミー設立に向けて奔走中。
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