<柳下美恵のピアノ&シネマ2023> screen ジャック

サイレント映画 & ピアノの即興生伴奏
ジャック&ベティのGWサイレント映画特集
楽しすぎる4プログラム9作品上映!
【終映日:2023年5月12日(金)】

十分余裕をもってお座りいただけます。
4月29日(土)〜5月05日(金)
11:00〜
5月06日(土)〜5月12日(金)
15:00〜
  一般 大専 シニア
通常 ¥2,000 ¥500 ¥2,000
会員 ¥1,700 ¥500 ¥1,700
高校生以下・しょうがい者:¥500
※Bプログラムは一般、会員、シニアともに¥1500

◉ユース(25歳以下)、障碍者手帳、ひとり親保険証、生活保護受給証明書提示で500円
◉ピアノ&シネマ2023の半券提示で2回目以降1000円
※上記以外の割引なし

◎5/1~5/31学生応援プライス500円対象
下記日程で映写室見学あり

・4/30(日)、5/3(水)、5/6(土)、5/10(水)
オンラインチケット購入はこちら

映画が誕生してまもなく130年、映画はライブだった。今では“サイレント映画”と呼ばれ、輝き続ける。

魅力たっぷりの4プログラム9作品を日替わり上映、映画を愛する素敵なゲストが連日来館!

 

【上映作品】

磁石警察 Police Magnétique 1902

臨時雇の娘 The Extra Girl 1923

最狂自動車レース Lizzies of the Field 1924

ふしぎなたいけんがくしゅう Wonderful Experience 2023

キートンのハイ・サイン The High Sign 1921

魔術師 Le Magician 1898

猫とカナリア The Cat and the Canary 1927

キートンの即席百人芸 The Playhouse 1921

花嫁人形 Die Puppe 1919

 

【ピアノ&シネマ】

2015年より横浜シネマ・ジャック&ベティで年 1、2 回開催しているサイレント映画特集です。今回は12 回目、4プログラム 9 作品のバラエティに富むコメディを上映します。プログラムごとに特徴を持たせて、前菜のような短編映画で肩の力を抜いてからメイン作品を楽しんで頂けるように構成しました。Bプログラムは、サイレント映画が初めての方もお子さまも楽しめるように、お客様やスタッフが映画に合わせて手拍子でリズムを打ってみるという伴奏体験も計画しています。プログラムの内容は上映+トークです。A、C、Dは約2時間、Bは約1時間を予定しています。

 

【サイレント映画】

1895年にパリのグランカフェ、インドの部屋でリュミエール兄弟が一般興行したのが始まりと言われています。それから約40年の間、今ではサイレント映画と呼ばれている映画の形態が続きました。大きな特徴に画と画の間に中間字幕という状況説明やセリフが文字で入ります。ですが 1910年くらいまでは中間字幕もありませんでした。フィルムで撮影されて映写機でスクリーンに投影する時の映写速度も作品によって異なりました。映写速度が20コマですと1 秒間に20枚の画が送られ、光を当てレンズを通してスクリーンに映し出されます。基本はモノクロですが、戦前ではフ ィルムに手作業で色を塗ったり、ステンシル(型枠)で色を載せたり、染色したりといろいろな方法で色がつけられていました。当時のフィルム原料はナイトレート(硝酸塩)というダイナマイトと同じ素材だったため、たびたび火災が起き、経年劣化で自然発火もあるために 1959 年に消防法で規制されて、燃えない素材にデュープ(複製)することが定められました。その際、サイレント映画は、復元できる技術者がいない、お金がかかるなどの理由でモノクロに複製されて残ったものが多く、サイレント映画=モノクロという 認識がされています。

 

【サイレント映画のピアノ伴奏】

映画は映写技師が映写機で映画を映し、楽士(日本は+弁士)がライブで伴奏(日本は+語り)、 その形が映画でした。欧米はピアノやオルガン、アンサンブルやオーケストラの伴奏が映画の要素の一つでした。伴奏は基本的に各映画館に任されていましたが、大作になると現在の映画(トーキー映画)と同じように 1 人の作曲家が映画のために作曲、その楽譜がフィルムとともに映画館に届けられました。ですが、楽士の力量が足りないと楽譜を弾けないという事態が起こりました。

グラウベルローシャ

【Aプログラム】ラブコメが好きな方、誰もが楽しめるプログラムです。

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『臨時雇の娘』The Extra Girl

1923年 アメリカ(75分/22コマ再生)

パテ・エクスチェンジ=アソシエイテッド・エキシビターズ作品 製作:マック・セネット、監督:F・リチャード・ジョーンズ 脚本:バーナード・マッコンヴィル、マック・セネット 出演:メーベル・ノーマンド(スー・グラハム)、ラルフ・グレイヴス(恋人デイヴ)、 ジョージ・ニコルズ(スーの父)、アンナ・ダッジ(スーの母) ヴァーノン・デント(スーの結婚相手)、シャーロッテ・メヌー(ブラウン嬢) ラムゼイ・ウォーレス(投資家ハケット)、ルイーズ・カーバー(衣装部主任) ウィリアム・デズモンド(男優)、カール・ストックデイル(歴史劇の監督) エリック・メイン(冒険活劇の監督)、ジャッキー・ルーカス(スーの息子) マックス・デヴィッドソン(衣装制作担当)、テディ(犬)、ヌーマ(ライオン) ビリー・ビーバン、ハリー・グリボン、ビリー・アームストロング フィルム復刻協力:大澤万佐夫、岡崎英夫(IMG)、児玉数夫、ソニーPCL デジタル復刻協力:ヨコシネ DIA、日本語字幕:石野たき子

《あらすじと解説》

ハリウッド女優を夢見る片田舎の娘スー。ひょんなことから映画スタジオに職を得ると、両親も家を処分してハリウッドへやって来る。そこへ裕福な投資家が、油田の利権を買わないかと現われて... 娯楽映画の礎を築き、数々の映画手法を編み出し、チャップリン、ビング・クロスビー、 キャロル・ロンバード、グロリア・スワンソン、フランク・キャプラ、ダリル・F・ザナックら数えきれないほど多くの映画人を育て上げた喜劇映画の帝王マック・セネット。そんなセネットには、自らのデビュー時から共に歩み、愛し続ける女優メーベル・ノーマンド がいた。だが、二人の運命は、メーベルが気まぐれな行動から殺人事件の最重要参考人と目されたことで悲劇へと向かう(まるでシリアスな映画のごとく)。本作はその悲恋の過程で製作された、セネット渾身の長編!人生そのものが破綻しかけているメーベルを救済しようと、献身的なセネットの愛情がスタジオの一門を集結させ、笑いあり、スリルあり、涙あり、サスペンスありと、伝説の傑作喜劇を生み出した!

【マック・セネット】

カナダのケベック州生まれのマイケル・シノットとして、地元の鉄工所で働きながら、ブロードウェイの歌手になることを夢見ていた。21 歳で単身ニューヨークへ移り、芸名マック・セネットとしてヴォードヴィルの舞台で端役を得るが、日銭稼ぎで新興の映画産業の エキストラにも応募、そこで大衆芸能での成功を夢見る青年 D・W・グリフィスと巡り合い、彼の監督作品でセネットは主役デビュー。その後にセネット自らも脚本・監督もこなす多才ぶりを発揮して、1912 年に喜劇専門のキーストン撮影所の所長に就任。以降、映画に《お色気》《パイ投げ》《アクション》《移動撮影》《カー・チェイス》《アニメーションと 実写の合成》を生み出し、数多くのスター、監督、プロデューサーを育て上げ、映画史にその名を刻む。日本ではチャップリンを見出した人物くらいにしか評価されていないが、 欧米の映画界ではエジソンやリュミエール兄弟よりも偉大な人物として讃えられ、芸術家にも多くの根強いファンがいる。

【メーベル・ノーマンド】

歴史上初の国際的なアイドルで、ハリウッド初のスーパースター級コメディエンヌ。 グリフィス監督作品でマック・セネットと知り合い、エキストラ同志でたちまち恋仲とな る。セネットが独立する際に同行し、主演女優としてデビュー、そして 1912 年以降、世界中のスクリーンで最も有名な女優(コメディエンヌ)となる。しかし、人気上昇と共にハリウッド・セレブ特有の自由奔放、贅沢三昧を繰り返し、セネットとは婚約と破談を繰り返す。その後、メーベルと交際を始めた映画監督が何者かに殺され、彼女に嫌疑がかけられる。事件は犯人不明のまま、殺された映画監督も偽名でアメリカへ入国していたことが判明、かような状況から聖職者や教育関係者を中心とした《乱交が蔓延する映画界の浄化運動》によって、世間がメーベル作品の排除に傾きかける。この時、メーベルへの一途な想いを抱くセネットによって、大衆の憎悪からメーベルは解放されるが、彼女自身はセネットとの復縁を選ばずに、サイレント映画の終焉と併せて、38歳で結核によって世を去る。 片想いのままのセネットは生涯独身を貫いた。メーベルとセネットの悲恋物語はハリウッド神話として、ブロードウェイの大ヒット・ミュージカル『Mack and Mabel』、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作『SLAPSTICKS』、宝塚月組『SLAPSTICK』等、今日までも多くの映画や舞台で取り上げられている。劇場内では、セネットの自叙伝『喜劇映画を発明した男』も販売中です!

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『磁石警察』Police Magnétique

 

1902年フランス(3分/24 コマ再生)

パテ・フレール作品 製作:シャルル・パテ、監督:ジョルジュ・アト、出演:ビュイック座

《解説》

本作を見て「まるでドリフの『8時だョ!全員集合』みたい」なんていう人がいたけど、コチラは『全員集合』より 67年早く作られているんだ!いや、映画黎明期の元祖・舞台中継なんだヨ!映画が発明されて間もなく、エンタテインメントとしての可能性が見出され、 より観客を楽しませる工夫が考えられていた当時の...本作はまさにその典型的な逸品。チャップリンやキートンのような《主役キャラクター》がまだ考案されていない頃、そして映画が《演劇の延長線上の表現》と考えられてアップや構図の工夫が看過されていた時代、 製作者や興行主は舞台芸をそのまま撮影する手法を常套としていた。こんな単なる《舞台芸の記録》だけど、実は20世紀初頭、鉄道網の発達と併せて、映画産業を全国へ急拡大させることには充分に貢献したのだった。それはつまり、「パリでしか見られない筈の人気一座が地方でも楽しめる」という訳。我々は 120年以上前の人々しか見られない筈の人気舞台を新たに楽しもう。

グラウベルローシャ

【Bプログラム】短編集、初心者向き、お子さまと一緒に楽しめるプログラムです。手拍子で映画伴奏にトライする時間もあります。

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『ハイ・サイン』 The'HighSign'

 

1921年 アメリカ(19分/24 コマ再生)

ジョゼフ・M・スケンク・プロダクションズ=メトロ・ピクチャーズ作品 製作:ジョゼフ・M・スケンク、監督:バスター・キートン、エディ・クライン 撮影:エルジン・レスリー、美術:フレッド・ガブリー 出演:バスター・キートン(放浪のヒーロー) バータイン・バーケット(ニッケルナーサー嬢) アル・セント・ジョン(砂浜の男)

《あらすじと解説》

放浪者のキートンは、ある町へ流れて来たところ、銃の腕を見込まれて悪漢一味から暗殺を依頼される。同じ頃、富豪にボディガードを頼まれるのだが、令嬢にほだされて断わり切れず受けてしまう。しかし、悪漢一味の暗殺相手とは、ボディガードを依頼した富豪のことであった...

バスター・キートンによる記念すべき監督・主演の第1作として、1920年に製作されたものの、キートン自身がなぜか内容に納得できずお蔵入りとした作品。翌年に第8作目として発表された。しかし、現代の我々がどこをどう見ても、どこが不本意なのか?わからないほどの見事な完成度。疾走感あふれる連鎖的ギャグ!これぞコメディの規範だ!尚、悪漢のボス役は役者不明、一部の資料などにジョー・ロバーツ扮との表記もあるが、これは誤りである。

 

【バスター・キートン】

ヴォードヴィル役者の両親の元に生まれ、3歳から舞台で活躍していた百戦錬磨の喜劇人。 1917年、当時最もギャラの高い人気コメディアン、ロスコー・アーバックル(デブ君)が セネット一門より脱退するにあたり、キートンを映画界へ誘い、フィルムの特性やカメラ等のメカニカル、現像プロセスや映画のつくり方を伝授する。そしてアーバックルと共に短編15作品を発表、好評を得たことで1920年に独立、キートン独自の喜劇製作を始める。 以降、8年間で作った短編20作品と長編10作品は、多くの映画関係者より《歴史上の傑作》と讃えられている。これらの作品では笑顔を見せなかったことから《笑わぬ喜劇王》《偉大なる無表情》と呼ばれるようになった。キートン作品は、アクションとパントマイムが特徴で、今日では特に女性ファンが多い。昨年、ラミ・マレックがキートン役の伝記映画が作られた。

『最狂自動車レース』Lizzies of the Field

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1924年アメリカ(11分/24コマ再生)

マック・セネット・コメディズ=パテ・エクスチェンジ作品 製作・脚本:マック・セネット、監督:デル・ロード 監修:F・リチョード・ジョーンズ、題字:ジョン・A・ウォードロン 撮影:ボブ・ラッド、ジョージ・スペア、編集:ウィリアム・ホーンベック 特殊効果:アーニー・クロケット 出演:ビリー・ビーバン(自動車整備士ガスケット)、シド・スミス(レーサーのティム)、 ジャック・ロイド(整備工場オーナー)、バーバラ・ピアーズ(オーナーの娘)、 ジョン・J・リチャードソン(悪漢レーサー)、アンディ・クライド(スターター) 日本語字幕:石野たき子

《解説》

スランプに陥ったジョージ・ミラー監督が『キートン将軍(大列車追跡)』、セネットとハロルド・ロイドのカー・アクション作品を鑑賞したところ、「娯楽映画の本質はコレだ!」 と一念発起、そして完成させたのが『マッドマックス 怒りのデスロード』だったという。 そのカー・アクション作品こそ...本作と思われる!セネットが生み出した《移動撮影》や 《自動車のブチ壊し》満載の、道化師軍団による狂騒劇!これぞスラップスティック喜劇の王道、娯楽映画の本質はコレだ!

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『ふしぎなたいけんがくしゅう』Wonderful Experience

 

2023年日本(分)

製作:大岡川はとば倶楽部 監督・出演:7人の小学生

《解説》

ジャック&ベティすぐそばにあるアートセンター若葉町ウォーフで開催されている子ども向けワークショッププログラム<大岡川はとば倶楽部>の一環で製作された。小学校一年生から六年生までの7名の子どもが、脚本を考えるところから、撮影、出演までをすべて担当。ジャック&ベティスタッフによる映画ユニット<いるかパーク>が講師を務めた。

『磁石警察』

グラウベルローシャ

【Cプログラム】サスペンス、アートが好きな方におすすめです。大人向きのプログラムです。

『猫とカナリア』The Cat and the Canary

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1927 年 アメリカ(91 分/20コマ再生)

ユニバーサル・ピクチャーズ作品 製作:カール・レムレ、監修:ポール・コーナー、監督:パウル・レニ、 原作:ジョン・ウィラード、脚本:ロバート・F・ヒル、アルフレッド・A・コーン 題字:ウォルター・アンソニー、設定監修:エドワード・J・モンターニュ、 撮影:ギルバート・ウォレントン、美術:チャールズ・D・ホール 編集:ロイド・ノスラー、マーティン・G・コーン 出演:ローラ・ラ・プランテ(相続人のアナベラ・ウエスト)、 クレイトン・ヘイル(ポール・ジョーンズ)、 フォーレスト・スタンレイ(チャールズ・ワイルダー)、 トゥリー・マーシャル(クロスビー弁護士)、 ガートルード・アスター(セシル・ヤング)、フローラ・フィンチ(スーザン・シルビー)、 マーサ・マトックス(マミー・プレザント) 日本語字幕:石野たき子

《あらすじと解説》

幽霊が出ると噂される豪壮な屋敷に、遺産相続を巡って集まった人々。相続人はアナベラと決まるが、遺産を受け取るためにはある条件が...すると彼女の周囲で次々と不可思議な出来事が起こり始める... 本作『猫とカナリア』は、壮麗で重厚なセットの中で繰り広げられるおどろおどろしい展開が特徴で、この雰囲気がユニバーサルのドル箱となるゴシック・ホラー『魔人ドラキュラ』『フランケンシュタイン』へ継承されたという。でも何より、シュール・レアリスム~ 表現主義を担ってきた美術監督出身レニならではの暗澹とした空気感は、百年近く前に作られたとはいえ、特筆すべきだろう!(因みに本作のセットは、何とチャップリン『街の灯』『モダン・タイムス』のチャールズ・D・ホールが担当!) さらに、《恐怖》をコミカルな展開にスイッチしての絶妙な演出!これはユニバーサルの喜劇部門アル・クリスティ・スタジオ傘下の喜劇人が集結して、ノリノリでレニを支えた成果と考えられる。この愉快なミステリーとして創造された『猫とカナリア』は、12年後に ボブ・ホープとポーレット・ゴダード主演でリメイクされ、以降はTV 版も含めて今日まで に 4 回も再演されている。レニの偉業といえよう。

【パウル・レニ】

1885年にドイツのシュトゥットガルトで生まれ、ベルリンの王立芸術アカデミーを卒業後 当時の一大潮流となるシュール・レアリスム運動への参加を経て、エルンスト・ルビッチ 作品などの美術監督として映画界入りを果たした。第一次大戦中の1917 年にプロイェクシオーンズ・アー・ゲー・ウニオンで監督へ転向、1924 年にウーファより発表した『裏町の 怪老窟(Das Wachsfigurenkabinett)』の大ヒットで、ユニバーサルの総帥カール・レムレ に招かれて渡米、今回上映の『猫とカナリア』をハリウッドから発表し、気鋭の監督と讃えられた。しかし、この後に三作品を発表するも、1929 年に虫歯が原因の敗血症で客死してしまう。夭折の天才がゆえに、今日では知る人ぞ知る監督となっている。

『魔術師』Le Magician

1898年 フランス(2分/12コマ再生)

テアトル・ロベール・ウーダン作品 製作・監督・主演:ジョルジュ・メリエス、共演:ジュアンヌ・ダルシー

《解説》

パリで映画が発明されたばかりの頃は、まだ上映専門の常設館はなく、カフェ・コンセー ル(今日のライヴ・ハウスのような会場)や見世物小屋で寸劇、曲芸、手品、歌唱と一緒に、映画は《数ある演目のひとつ》として扱われていた。そんな中、映画撮影に興味津々の奇術師ジョルジュ・メリエスは、撮影中にフィルムが絡まったことから偶然にトリックの手法を発見、すぐさま自らがオーナーの劇場にて、舞台ではナマ上演が不可能な《人間消滅》を奇術のレパートリーに加えたのだった。その2年後に撮影の本作では、さらに《瞬間移動》も組み合わせている。主役のマジシャンをメリエスが、消される踊り子を妻のジョアンヌが演じている、19世紀のマジックの息吹を窺い知ることもできる貴重な映像だ。

グラウベルローシャ

 【Dプログラム】演劇、アートが好きな方にもおすすめの個性的なプログラムです。

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『花嫁人形』The Doll / Die Puppe

 

1919 年 ドイツ(64 分/24 コマ再生)

監督・脚本:エルンスト・ルビッチ、共同脚本:ハンス・クレリ 出演:オッシ・オスヴァルダ(オッシ) 、ヘルマン・ティミヒ(ランスロー)

《あらすじと解説》

叔父の遺産を継ぐため結婚を余儀なくされた女性嫌いのランスロー。天才職人に花嫁の代わりの人形を作らせ、ごまかそうとするが...。登場人物の強烈なキャラクターや人形役のオッシの動きに大笑い。書き割りや着ぐるみなどを使った舞台的な演出も効いている、ルビッチによるシュールなコメディ。

本作はギリシャ神話『ピグマリオン(ピュグマリオーン)』をヒントに創作したと考えられる傑作。主演女優のオッシ・オスヴァルダは、当時のハリウッドの大スター、メアリー・ピックフォードになぞられて欧米で大人気を博した。

【エルンスト・ルビッチ】

1892年にドイツのベルリンで裕福なユダヤ教徒の服屋の家庭に生まれ、16歳で学校の演劇部に入り、照明や美術を学ぶ。1911年にドイッチェス・テアトルの舞台監督マックス・ラインハルトに見出されて学校を中退、小さな役も与えられるが、生活を支える程の収入が得られないために副業として翌1912年にベルリンにあるアメリカの映画会社バイオスコープの支社で雑役夫もこなしていた。そこで 1913年に喜劇映画の主人公メイヤー(またはマイヤーと発音)に抜擢され、ドイツ映画界初のコメディアンとなった。これはセネットを筆頭にチャップリン、キートンなどが活躍する以前の 1910年代前半(第一次世界大戦前)、 フランス・イタリアを中心とした欧州コメディアンの一大ブームから、各国の映画会社が独自キャラクターの創作に乗り出していたことに因む。大戦後は荒廃した祖国ドイツの人々を癒そうとシリアス路線の監督・脚本家としても活躍、稀代のヒット・メーカーとして経営不振のウーファを救済した。1919年に『パッション(Madame DuBarry)』 をプロイェクシオーンズ・アー・ゲー・ウニオンから発表、アメリカではかつての敵国ドイツの映画ということからデンマーク作品としてユニバーサルが配給し、主演のポーラ・ネグリを世界的な女優に育て上げる。この大成功から、メアリー・ピックフォードとカール・レムレに誘われハリウッドに活動拠点を移して、今日の我々が知るルビッチ・タッチの傑作『結婚哲学』『陽気な巴里っ子』『極楽特急』『ニノチカ』『天国は待ってくれる』などを発表する。特筆すべきは、ハリウッドへ移入した直後に、スタジオ・システム(スタ ー育成から撮影所の運営、系列映画館網を一括管理する経営戦略)に乗り遅れ、経営不振に陥っていたワーナー・ブラザースを『陽気な巴里っ子』一作で再興させた!という武勇伝もある。エルンスト・ルビッチの本来の発音は英語だとアーネスト・ルビッチ、独語ではエルンスト・ルービッシュ(ルービッチュとの中間の発音)とのことで、戦後の映画会社か評論家が輸入宣伝する際に「エルンスト・ルビッチ」と綴られたものが綿々と続いている!? 1947年歿。

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『即席百人芸』 The Playhouse

 

1921年 アメリカ(23分/20コマ再生)

コミック・フィルム・コーポレーション=メトロ・ピクチャーズ作品 製作:ジョゼフ・M・スケンク、監督:バスター・キートン、エディ・クライン 撮影:エルジン・レスリー、美術:フレッド・ガブリー 出演:バスター・キートン(舞台の裏方、他)、ジョー・ロバーツ(髭のズアーブ兵)、 ヴァージニア・フォックス(潜水芸の娘) 日本語字幕:石野たき子

《解説》

撮影機のメカニズムから特殊効果への応用、フィルム現像プロセス等に精通していたキー トンの初期傑作。多重露光と絶妙なパントマイムで、キートンの百花繚乱!アメリカで初公開された 1921 年当時の世相をネタにしたギャグが多く、ちょっぴりストーリーはわかりづらいかもしれないけど、驚異の一発芸とキートンの多彩な変装にかかれば、わからないことなんてどうでもイイ!摩訶不思議な笑いの万華鏡だ!

あらすじなど詳細は下記をご覧ください。

柳下美恵のピアノdeシネマ2017~三大喜劇王特集②

『磁石警察』

上映作品提供:喜劇映画研究会、(株)ダッサイ・フィルムズ

グラウベルローシャ

【スケジュール&トークゲスト】

◉連日、柳下美恵のピアノ伴奏付き上映です。

◉上映後の映写室見学日は後日発表します。

<開映時間> 4/29日-5/5日 11:00   5/6日-5/12日 15:00

4/29日(土) Aプログラム 新野敏也さん(喜劇映画研究会代表)

4/30(日) Bプログラム 新野敏也さん

5/1(月) Cプログラム 宮下啓子さん(無声映画愛好家)

5/2(火) Dプログラム 辻本マリコさん(Cinema Studio 28 Tokyo主宰)

5/3(祝・水) Aプログラム 新野敏也さん

5/4(祝・木) Cプログラム 樫原辰郎さん(映画監督、作家)

5/5(祝・金) Bプログラム 新野敏也さん

5/6(土) Dプログラム 渋谷哲也さん(ドイツ映画研究、日本大学文理学部教授)

5/7(日) Cプログラム 篠崎誠さん(映画監督、立教大学現代心理学部教授)新野敏也さん

5/8(月) Bプログラム 新野敏也さん

5/9(火) Dプログラム 宇田川幸洋さん(映画評論家)

5/10(水) Aプログラム 樫原辰郎さん

5/11(木) Cプログラム 樫原辰郎さん、宮下啓子さん

5/12(金) Dプログラム 新野敏也さん

※上記の予定以外に新野敏也さんご来場の可能性があります!

 

【柳下美恵 Mie Yanashita】

サイレント映画ピアニスト。武蔵野音楽大学有鍵楽器専修卒業。1995年、山形国際ドキュメンタリー映画祭オープニング上映、映画生誕百年祭『光の生誕 リュミエール!』でデビュー。以来、国内、海外の映画祭、映画館などで伴奏多数。第32回ボローニャ復元映画祭に招聘され日本人初のレギュラーピアニストとして伴奏した。鬼才カール・ドライヤー監督の傑作『裁かるゝジャンヌ』の音楽を担当、日、英、米、丁で発売、好評を得ている。サイレント映画を映画館で上映する環境作りに注力中。

 

新野敏也(あらのとしや)

 

本年11月で結成47年目となる喜劇映画研究会の二代目代表。1992年に欧米コメディの歴史を網羅した書籍『サイレント・コメディ全史』を刊行して以降、所蔵フィルムと関連資料を活動の軸にイベント開催、学校、各種メディア、公共機関などの講演や企画協力を行なっている。映画史に基づく映像技術、ギャグ分析、演出と撮影法の分析を得意とする。

 

ホームページhttp://www.kigeki-eikenn.com/

 

ツィッター https://twitter.com/kigeki_eikenn

 

ブログ「君たちはどう笑うか」https://blog.seven-chances.tokyo/

 

 

 

宮下啓子(みやしたけいこ)

 

無声映画を起点とする“変体”映画愛好家。大学時代に出会ったリリアン・ギッシュに導かれて遅まきながら映画に開眼。見る・集める・知るの修業時代を経て1998年仲間と一緒に戦前映画の自主上映会「活動倶楽部」を立ち上げ、今年で25周年。趣味が嵩じて映画研究にも手を染め、2022年11月共著で「片山明彦資料集」全2巻を完成。アートアニメ、「事件記者」の大ファンでもあり、クラシック映画の面白さを伝える語り部として活動中。

 

 

 

辻本マリコ(つじもとまりこ)

 

家族の影響により幼少期からサイレント映画・クラシック映画に親しみ、新旧問わず観る雑食な映画好きに育つ。薦められ知ったエルンスト・ルビッチ作品にパリの映画館で再会し夢中に。人生最後に観たい1本は「極楽特急」、推し俳優はハーバート・マーシャル。2016年よりWebマガジン「Cinema Studio 28 Tokyo」を主宰し、多彩な視点から映画や映画館にまつわる連載・記事を編集・執筆している。

 

http://www.cinemastudio28.tokyo/

 

 

 

樫原辰郎(かしはらたつろう)

 

1964年大阪生まれ。大阪芸術大学文芸学科中退。在学中の1984年から1987年頃にかけて、大阪門真市の海洋堂ホビー館に関わり、組立、宣伝などに携わる。1998年から東京で脚本家、2001年からは映画監督をつとめる。2008年、円谷プロダクションの企画開発部に関わり『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説』の脚本に参加。現在は作家、評論家業をメインとしており、著作には『海洋堂創世記』、『「痴人の愛」を歩く』、『帝都公園物語』。最新刊は『ロックの正体 歌と殺戮のサピエンス全史』晶文社。

 

 

 

渋谷哲也(しぶたにてつや)

 

1965年生まれ。日本大学文理学部教授。ニュージャーマンシネマを中心にドイツ映画を広範に研究。

 

単著に『ドイツ映画零年』、編著に『ナチス映画論』、『ストローブ=ユイレ シネマの絶対に向けて』

 

など。ファスビンダー映画をはじめ数多くの字幕翻訳を手がける。

 

 

 

篠崎誠(しのざきまこと)

 

映画監督。立教大学現代心理学部教授。幼い頃から映画に魅せられ中学から自主制作映画に手を染める。

 

立教大学で社会心理学を学び卒業後、映画館勤務。映写技師、映画ライター、宣伝、配給など映画を巡る様々な仕事を経験。95年『おかえり』で商業映画監督デビュー。劇映画、ドラマ、ドキュメンタリーなど様々な映像作品を手掛ける。代表作として『忘れられぬ人々』(2000)『あれから』(2012)『SHARING』(2016)『共想』(2017)などがある。

 

 

 

宇田川幸洋(うだがわこうよう)

 

1950年生まれ。映画評論家、映画監督。東京都出身。15歳の頃に8mmフィルムで映画を撮りはじめ、1978年に楳図かずおの漫画を原作とした16mmフィルム作品『おろち』が第2回ぴあフィルムフェステバルに入選する。香港や中華圏の映画について執筆多数、日本経済新聞の映画評のレギュラー執筆者。

 

単著「無限地帯 From Shirley Temple to Shaolin Temple」(2002)共著「キン・フー 武侠電影作法」(1997)などがある。

関連映画
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