公式サイト: http://my-angel-movie.com
愛し方が分からない母と、愛されたことのない娘。手探りで紡ぎ上げる、二人の〈愛〉の形とは。
【終了日:2019年10/25(金)】
【原題】Angel Face
【監督】バネッサ・フィロ
【キャスト】マリオン・コティヤール,エイリーヌ・アクソイ=エテックス,アルバン・ルノワール,アメリ・ドール,ジャンステファーヌ・リドー
2018年/フランス/108分/ブロードメディア・スタジオ/DCP
10月12日(土)〜10月18日(金) |
10:35〜12:25 |
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10月19日(土)〜10月25日(金) |
20:40〜22:30 [レイト] |
一般 | 大専 | シニア | |
通常 | ¥1,800 | ¥1,500 | ¥1,100 |
会員 | ¥1,500 | ¥1,200 | ¥1,100 |
一般 | 大専 | シニア | |
通常 | ¥1,500 | ¥1,200 | ¥1,100 |
会員 | ¥1,200 | ¥1,100 | ¥1,100 |
2007年の『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』でフランス人女優としては49年ぶりのアカデミー賞主演女優賞を受賞し、名実共に世界的なスター女優となったマリオン・コティヤール。その後もジャック・オーディアール監督の『君と歩く世界』、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督ダルデンヌ兄弟の『サンドラの週末』、グザヴィエ・ドラン監督の『たかが世界の終わり』などで傑出した演技力、存在感を示し、出演作を厳選することでも知られるコティヤールが、異例と言うべき未知の新人女性監督とのコラボレーションに挑んだ。写真家として長らく第一線で活躍してきたヴァネッサ・フィロのオリジナル脚本に心奪われたオスカー女優が、渾身の役作りで“母親”というキャラクターを体現した必見の一作、それが『エンジェル・フェイスマイ・エンジェル』である。
南仏コート・ダジュールのシングルマザー、マルレーヌは、8歳の娘エリーを“エンジェル・フェイス”という愛称で慈しみ、気まぐれなその日暮らしの生活を送っていた。しかし酒癖の悪さがたたり、結婚相手の男性との関係が破綻したマルレーヌは、厳しい現実から逃れるようにエリーの前から姿を眩くらましてしまう。アパートに置き去りにされたエリーは、ヴァカンスの季節が過ぎ去った街を危うげにさまよい、海辺のトレーラーハウスに住む孤独な青年フリオに「パパは知らない。ママはいなくなった」と打ち明ける。やがて自分を取り巻くこの世界の残酷さを知り、行き場を失ったエリーは、突然舞い戻ってきたマルレーヌを拒絶して衝撃的な行動に走るのだった……。
【夏が過ぎゆく南仏コート・ダジュールを舞台に、行き場を失った母娘の絆の崩壊と再生をエモーショナルに紡ぎ上げた映像世界】
地中海に面した風光明媚なリゾート地として有名なコート・ダジュールを舞台にした本作は、そのきらびやかな世界の片隅にぽつんと取り残され、迷子のように彷徨するひと組の母娘の物語。幸せのありかはおろか、自分たちの居場所さえ見つけることのできないマルレーヌが、母親であることの責任に耐えかねて現実から逃避していく姿を描出。そして、このヒューマン・ドラマはどことなく大人びた少女エリーの好奇心と不安が揺らめく視点で語られ、その繊細にしてスリリングな映像世界は観る者の胸を締めつけずにおかない。依存症や育児放棄といったリアルな社会問題を取り込みながら、人間の優しさと脆さ、愛の尊さと痛み、傷ついた母娘の絆の崩壊と再生を紡ぎ上げたエモーショナルな一作である。
ヴァネッサ・フィロ監督が「非常に現代的な女性でありながら、どこか時代を超えたヒロイン」と形容するマルレーヌに扮したマリオン・コティヤールは、劇中では一切描かれていないヒロインの“過去”への想像をふくらませ、感情の振れ幅の大きな難役と一体化していった。天使のように美しい我が子を想いながらも、愛し方のわからないマルレーヌの矛盾した言動を演じきったパフォーマンスには、涙ぐましい感傷をはるかに超越した迫真性がみなぎっている。
もうひとりの小さな主演女優エイリーヌ・アクソイ=エタックスは、本作のにおける驚嘆すべき発見と言えよう。エリーの年齢設定と同じく撮影時8歳だったこの子役は、フィロ監督がキャスティングに何ヵ月も費やして発掘した逸材。親に捨てられた“哀れな少女”の役どころを大人顔負けのハードボイルドな風情で演じ、母親への眼差しの複雑さ、過酷な世界を生き抜く強さをも表現してみせたエイリーヌに、「彼女は賢くてアーティストの魂を持った、とても魅力的な女の子」とコティヤールも賛辞を惜しまない。
また、フィロ監督は少女時代にクシシュトフ・キェシロフスキ監督、ジュリエット・ビノシュ主演の『トリコロール/青の愛』を観て衝撃を受け、映画監督を志したという。満を持しての長編デビューとなった本作では、ヴィジュアリスト、ストーリーテラーとしての両面で遺憾なく豊かな感性を発揮し、コティヤールに「素晴らしい才能の誕生」と言わしめた。そんなフィロ監督のリアリズムと夢幻性が入り混じる世界観を、コート・ダジュールの光と影を多面的に捉えて映像化した撮影監督は、『アーティスト』でアカデミー賞撮影賞にノミネートされた名手、ギヨーム・シフマンである。
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