広島を拠点に俳優、監督として活動する前田多美が、広島のボーカルユニット「深夜兄弟」の3人を主演に描く、ある家族の物語。【終映日:2022年11月4日(金)】※1週間限定上映
【監督】前田多美
【キャスト】ミカカ,Jacky,のっこん,前田多美,青山修三,梶田真悟,ウエノケンジ,こだまこずえ,荒谷陽人,原田丈土,縄手健太,カツチヤン,那須直子,舛部貴子
2021年/ 日本/91分/ Donuts Films/DCP
10月29日(土)〜11月04日(金) |
15:45〜17:25 |
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一般 | 大専 | シニア | |
通常 | ¥1,800 | ¥1,500 | ¥1,200 |
会員 | ¥1,500 | ¥1,200 | ¥1,200 |
街の小さな路地、ふと唄が聴こえる。祭囃子のようなアコースティックな響きは、木造家屋の古本屋の上階から鳴っているようだ。
山尾家長男森男(ミカカ)次男林蔵(Jacky)三男三樹(のっこん)の三兄弟は、音楽という共通点をもつものの、それに対する姿勢はてんでバラバラだ。全員30歳半ばを過ぎ、それぞれの人生を歩んでいるが、時々、森男の部屋に集まっては唄う。特別仲がいいわけでも悪いわけでもないが、三人で唄う理由は、約30年前に亡くした父の法事のため。呑んで唄う独自で唯一の家族行事だ。
ある日、森男の元に、生き別れた異母兄弟の川瀬葉月(前田多美)から手紙が届く。約30年音信不通だった遠い妹が三兄弟の縁に絡み始める。また、三樹の携帯に人生の選択を必要とする知らせが入る。思いがけない便りをきっかけとして、弔いあげとなる父の三十三回忌を目前に、山尾家の日々が動き出す。”犬ころ”たちの唄で紡ぐ兄弟の一歩の物語。
実在とフィクションが交流するような
広島を拠点に活動している”深夜兄弟”という音楽ユニットがいる。メンバーは、ミカカ、Jacky、のっこんの3人で、3人ともボーカルだ。各人ひとりひとりになれば、音楽性は全く別世界になるのに、3人が揃えば絶妙な親和性を生み聴き手を魅了する。
ファッション、キャラクター、年齢もばらばらの3人は、バンドを組むからには一丸となって同じ未来に突き進んでいるかと言えばそうでもなく、ただ、心の根底に同じ風景を大切にしているかのような安心感がある。
そんな深夜兄弟が「もし本当に兄弟だったなら?」と、着想したのは前田多美監督だ。彼女は大阪出身で、東京で俳優として活動していたが、32歳で広島へ移住。監督経験、人間関係もゼロからの状態で映画を作り上げるまでに至った。
何も持たないが故の、不器用さと初期衝動感を纏った映画『犬ころたちの唄』は、その土地に実在する人たち・風景と交流する、紛れもなく”どこにでもあるようなここにしかない”物語なのである。
仕込みの時期を経て出会いたい
2020年7月、プロジェクトは始動した。コロナ禍である。初めての緊急事態宣言を経て、監督・プロデューサーである前田の頭には「今年は仕込みの時期」という想いがあった。今まで通りにいかない、できないことが増える中「作ること」には注力できそう、ということだ。
また、さまざまな表現者たちが収入源や表現の場を失っていた。
予算の限られる自主制作であっても、映画人だけでなくミュージシャンの人たちにも活躍してもらえるような映画がよかった。かつてライブ会場で前田監督が着想した深夜兄弟主演の映画を、今こそ実現させる時だったのだ。
「できること」から可能性を探る
映画を作るにしても、一人でやらない限り感染リスクは伴う。想定外のことが起こっても軌道修正しやすいように、できる限りコンパクトなチームで、月に2〜3日のペースで撮影は進められていった。
「作ること」に注力すると決めたものの、新作映画を届ける営みも止めたくない気持ちもあった。そこで「犬ころたちの唄」プロジェクトは、撮影しながら編集も進め、2020年が終わる頃までに3本の「短編」として配信公開を試みた。映画本来の在り場所は映画館という想いは強いものの、届け方として、当時確実に「できること」だった。
一歩ずつでも出会いの時期へ
2021年。一度配信した短編の『犬ころたちの唄』を解体し、撮り貯めた未公開シーンとともに再構築し、全く新しい劇場版が完成した。
雲が晴れたときに共に笑えるように、たくさんの人たちに楽しんでもらえるように、という祈りを込めた「仕込みの時期」を経て、まだ、コロナの災禍はひどい状況が続いているものの、少しでも生活に楽しみを、文化の営みを繋ぎたい想いで、全国の映画館へ”犬ころたち”は進んで行く。
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