4/2(土)より『ドリームホーム 99%を操る男たち』上映がはじまります。
奇しくも、同じ金融危機を題材にして、アカデミー賞の脚色賞を受賞した
話題作『マネー・ショート 華麗なる大逆転』と同時期の公開です。
「マネー・ショート」は、当館からも近い横浜ブルク13で観れるぜ! ということで、
金融危機について、特になにも考えたこともない35歳である私に対する、
映画の神さまからの「少しは勉強せよ」というメッセージと受け止め、両作品を鑑賞しました。
この2つの作品『ドリームホーム』と『マネー・ショート』は、
サブプライムローン問題に端を発する金融危機を題材にしていますが、
作品で描かれている世界は、両作品でまったく異なっていました。
ざっくりいうと、
抽象化された金融システムを扱う「マネー・ショート」の世界と、
現場レベルの「ドリームホーム」の世界です。
片方の作品を観れば、片方の作品の理解が促進されるかというと、
実のところそうでもない。
むしろ、それぞれの世界のレイヤーの違いに呆然としてしまう。
『マネー・ショート』では、金融危機を予測した金融マンたちの奮闘が描かれますが、
あまりに入り組んだ事態の前で、具体的に手の施せる「問題」という形すら見えてこない。
そして、システムが崩壊することが分かって、それを利用することはできても、
その崩壊を基本的には、傍観するしかない。
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(C)2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
一方の現場レベルの「ドリームホーム」の世界はどうかといえば、
主人公やその家族、周囲の人たち対して、金融危機の影響が、
具体的・現実的な問題として、どんどんふりかかってきます。
その問題というのが、文字どおり、クソのような(失礼)出来事ばかりでして、
口からため息とか、アレとか、いろいろ出そうになる事態ばかりです。
(子供を通学バスに乗せるシーンなど、細かな演出によって、
「あなたを中心に世界はまわっていません」と暗示されます)
『ドリームホーム 99%を操る男たち』(C)2014 99 Homes Productions LLC All Rights Reserved
「ドリームホーム」の副題は、「99%を操る男たち」となっていて、
確かに、主人公は、ある人物との出会いをきっかけに、
99%の貧困層サイドから、1%の富裕層サイドに、その手をかけたようにも見えます。
しかし見方によっては、主人公はあくまでも1%の思惑によって利用され、
99%のなかでのみ相対的な優位に立たされている存在、とも言え、
「サウルの息子」に描かれた、強制収容所におけるゾンダーコマンドの立ち位置を、
思い起こさせるものがありました。
『ドリームホーム 99%を操る男たち』(C)2014 99 Homes Productions LLC All Rights Reserved
1%への壁は、そんな簡単に上れるものではない。
実はそれは壁なんてものではなく、次元が違うのだから。
そんなことが、両作品を通じて私に感じられたことで、
見終わって決してすっきりする作品ではありませんが、
どちらも観て良かった両作品でした。
ちなみにブルク13さんで上映中の『マネー・ショート』も、
「ドリーム・ホーム」当館公開中も続映されるようで、両作品のハシゴもおすすめです。
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補足:
この両作に触れられた、このような記事もあります。
「むずかしい!」と評判の(実際難しいのですが)『マネー・ショート』の
鑑賞前に読むと、予備知識としてもよいかと思います。
▼格差を生み、不況をもたらした許されざる”真犯人”
公開中『マネー・ショート』と『ドリームホーム』が雄弁に語る世界経済
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46437
小林