散財劇場vol.02●馬車道の「横浜宝塚劇場」プログラム


あけましておめでとうございます。
2014年もよろしくお願い致します。

年明けですので、景気良く、散財してみましたのでご報告します。

今回の散財は、かつて馬車道にあった映画館「横浜宝塚劇場」の上映プログラムです。
年代は明記されていませんが、上映作品から調べる限り、1954年のものと思われます。



「横浜宝塚劇場」の外観写真はこちらにありました。

横浜宝塚劇場は1935(昭和10)年4月の開場。
「ヨコホウ」と通称され収容人数1440名を誇る大規模な劇場・映画館だった。

(▼引用元:横浜宝塚劇場ーモダン横浜歴史情報マップ
 http://www.tohatsu.city.yokohama.jp/HIMap/HIMap2_j_Takarazuka.html)

この映画館は、現在の関内ホールの場所にあったそうです。

戦争を挟んで人気だった横浜宝塚劇場は、
昭和45年(1960年)横浜市に譲渡され改装「市民ホール」としてオープンした。
その後、昭和61年(1986年)宝塚劇場時代から約50年経たこともあり
老朽化などを理由に建て替えが行われた。
これが現在の「関内ホール」である。

(▼引用元:2013 横浜わが街シリーズ No.25 1月25日 馬車道の華
http://tadkawakita.blogspot.jp/2012/01/125.html)

今回入手したのは1954年のスケジュールですから、開館19年目のものです。
1スクリーンで、収容人数1440名…いまでは考えられない大劇場です。

さて今回のスケジュールで注目されるのは、表紙で大々的に謳われているとおり、
この時期に<暖房が導入された>ということでしょう。

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永い間御辛抱願ひましたが愈々之の十二月初旬を期して日本一
優秀な完全暖房が完成されます。目下昼夜兼業にて工事中でございます。
何卒之の冬は寒さ知らずの横宝でシネマスコープの名作を御鑑賞下さい。
———————————

“日本一優秀な完全暖房”という言葉からは、
なにをもって日本一なのか? そして、“完全”暖房とはなにか?
という疑問を、気にする余地もないほどの興奮が伝わってきます。

ウラ面においても、おそらく毎号の恒例だったと思われる
<太郎>と<叔父>の対話型の記事の中で、暖房について触れられていました。

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太郎…叔父さん愈々横宝にも暖房が出来ますね。
   之で今年の冬は安心してシネスコを見に行けますね。

叔父…全く良かったね。実の話今年も冬の事を思うとゾートしていたんだが!!
   <中略>まあ今年の横宝はどうやら寒さ知らずの天国と云えるね。

太郎…全くの話、寒くちゃ幾ら名画でも面白さが半減しますからね。
   「悪の花園」や「折れた槍」を外套無しで見られりゃ素適(原文ママ)だろうな。

叔父……ハハ…いくら暖房でも、汗をかかすのじゃないからね、
   場内を春の様な暖かさにするのが完全暖房の目的さ、
   冷房だからと云って零下何十度にする劇場は無いだろう。

太郎…成程そうですね。
   処で十二月から正月にかけて横宝の番組は
   豪華世界一だと云う話ですが?
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冒頭からずっと暖房の話をした後、「成程そうですね」とひと呼吸だけおいて、
「ところで、番組が豪華世界一だと云う話ですが?」

“豪華世界一”なことは、普通の感覚では、なにをおいても真っ先に触れたい部分ですが、
「ところで、番組が豪華世界一だと云う話ですが?」
という、“そっちはあとまわし”な感じが、完全暖房の重要度を物語っています。

そして、暖房とは別に、ぜひ触れておきたいのが、オモテ面右側の<英語解説>の部分であります。

ここでは「デミトリアスと闘士」のあらすじが英語で記載されています。
また、下部の「TAKIYA」の広告も外国人向けの英語表記となっています。


第二次大戦後に行われた占領軍による横浜接収。
このプログラムが発行された1954年頃、関内地区の大部分で接収は解除されていたようですが、
当時であっても、占領軍が映画館にとって、重要なお客さんだったことが伺い知れます。

ちなみに、ジャック&ベティでも英語のスケジュールを作成しています。
これは、現時点で、外国語のお客さんが、たくさんいらっしゃるというより、
「日本語以外のお客さまにもぜひ来て欲しい!」という気持ちの表れです。

「横浜宝塚劇場」は1960年に横浜市に譲渡されて閉館し、
1986年に関内ホールとなった、とありました。

その関内ホールが、映画ファンによって運営されている日本屈指の映画祭、
「ヨコハマ映画祭」の会場となっているという歴史にも惹かれます。

 ▼ヨコハマ映画祭 映画ファンのための熱いまつり
 http://homepage3.nifty.com/yokohama-eigasai/

「ヨコハマ映画祭」では、毎年、1000席の客席が満席になり、
ホール全体が映画ファンの熱気に包まれます。
その光景は、かつてそこに存在した、“豪華世界一“な映画館
「横浜宝塚劇場」の面影を、今に伝えているといえるかもしれません。

ちょっといい感じで、しめてみました。
本年もよろしくお願い致します。

小林

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