是枝裕和監督が30年前に手がけた、テレビドキュメンタリー作品『彼のいない八月が』を特別上映!
【監督】是枝裕和
日本/77分/テレビマンユニオン
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1992年、性行為によってHIVに感染したことをメディアを通して日本で初めて公表した男性がいた。詩人の平田豊さんだ。
現在とは違い、ウィルスを抑える効果的な治療薬もなく、死のイメージが強かったHIVとAIDS。同性とのセックスによる感染は、当時そこにさらなる差別と偏見を招いた。その状況下で当時37歳だった平田さんはHIVに感染していることを顔と名前を出して公表し、大きな注目を集めた。
当時テレビマンユニオンに所属していた是枝裕和さんは、闘病しながらも力を振り絞りながら詩をつくり、公演を行う平田さんを「取材」。その姿をカメラとともに追い、やがて彼に寄り添うようになる。その映像には、AIDSを発症し闘病しながらも、明るくちょっといい加減に、そして一生懸命に生きた平田さんの姿が記録されている。
本作がフジテレビ「NONFIX」で放送された1994年の8月には、横浜でアジアで初となる国際エイズ会議が開催されたが、依然としてHIVの有効な治療法が見つからないまま、感染者や死者数は増えていき医療従事者や活動家にも疲れが見えていた。しかしその一方、東京ではプライドパレード/マーチも開催された。本作は将来への不安と希望が入り混じった、そんな時代の空気を感じさせる。
本作放送からちょうど30年。今、その映像は何を伝え、私たちはそれをどのように受け止めるのだろうか。
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