<ミリム劇場への道>1号
〜2019年6月7日〜9日、韓国で、ジャック&ベティとミリム劇場の共同企画を開催予定!
本稿は当館のお客様にその進捗を報告し、見届けて頂くためのドキュメントです。〜
(報告:副支配人・小林)
ジャック&ベティのような独立系の映画館が、映画館同士で交流できる機会は少ない。だから自分の映画館に、別の映画館の人が訪ねて来てくれると嬉しい。
それが国外からとあれば、なおさらだ。
2018年11月18日。昼過ぎの上映もはじまり、ロビーも静かになった頃、受付に現れた二人の男性。
聞けば、韓国の映画館の関係者だという。
二人はチェさん兄弟。兄のチェ・ヒョンジュンさんが、インチョン広域市にある映画館「ミリム劇場」の代表。弟のチェ・ヒョンギさんは、エンジニアとして神奈川県内で働いており、日本語が達者なので、付き添いで来てくださったそうだ。
「ミリム劇場」は283席の劇場で、主に高齢者をターゲットにした映画館だという。韓国に《シルバー映画館》というジャンルがあることを後で知ったが、著作権が切れた旧作(パブリックドメイン)のプロジェクター上映をメインのプログラムとしている。
入場料は、55歳以上が2千ウォン、約200円! ちなみに一般でも5千ウォンで、約500円。パブリックドメインの上映で、作品にかかるお金が少なくても、それほど安価な入場料を元に、劇場を維持するのは難しいのでは…と思いきや、やはりその通りで、行政からの助成金などを受けつつ、非営利団体として運営しているが、経済的に厳しい状況だという。
映画立国という印象があった韓国における「ミリム劇場」の厳しい状況、《シルバー映画館》という在り方など、初めて知る韓国事情を興味深く聞きつつ、一方でジャック&ベティとの類似点の多さにも驚かされた。
第一に、60年以上の歴史を持っている点。ジャック&ベティ前身の名画座は1952年開館。ミリム劇場は1957年にテントでできた劇場(!)として開館している。
第二に、閉館を経験したあと、別の団体により再開している点。ジャック&ベティは2005年2月に一旦閉館し、同年8月に再開。ミリム劇場はシネマコンプレックスの台頭に伴い2004年に閉館し、2013年に現運営で再開している。
第三に、300万人規模の都市に位置し、非メジャー系の作品上映を中心として、存続を模索している点。横浜とインチョンは、ともに両国の交易の拠点であり、東京とソウルのベッドタウンとしての側面も似ている。そして、どちらにも中華街がある!
両館の類似点について、チェ代表も同じことを考えたようだ。そして唐突な提案があった。
「ミリム劇場とジャック&ベティで、共同企画をやりませんか?」
ある日曜日の午後、そのようにして、ミリム劇場への道は、はじまったのだった。
(2号へ続く※四月掲載予定)
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ミリム劇場公式サイト(www.milimcine.com)より一部を抜粋し、google翻訳
【挨拶文】レジャーが少なかった時代のお年寄りたちにとって、映画は唯一の文化でした。今の若い世代とは異なり、お年寄りたちは映画を見るために、チケットを何時間も待ち、観覧していた“ロマンの時代”を生きました。
1957年、インチョン東区ソンヒョンドンにテントを立て無声映画を上映したのを皮切りに開館した「ミリム劇場」は、当時のインチョンを代表する映画館であり、長い間市民の愛を一身に受けた、歴史ある文化空間でした。
かつてマルチプレックス映画館の攻勢に押されて、「ミリム劇場」はインチョン市民のそばを離れましたが、50代以上のお年寄りのための文化的な生活と、幸せな老人文化の発展のために最善を尽くそうと「追憶劇場 ミリム」として再オープンしました。
新しく生まれた「追憶劇場 ミリム」は、年配の方の目線に立った文化サービスを、誠実に提供して、健全な高齢者のレジャー文化を作っていきたいと思います。かつてミリム劇場において、楽しい時代を過ごし、ロマンで胸をいっぱいにしたお年寄りたちに、その時、その時代の思い出を、再び感じることができる空間になろうとします。また、劇場周辺の思い出が詰まった食べ物や見どころなど、他の連携事業も着実に発掘していきます。
「追憶劇場 ミリム」は、インチョンの文化名所として、若い世代と老年世代を網羅する文化空間として絶えず努力していきます。
【事業紹介】
<上映>
① 古典的な映画の上映 ② インディペンデント映画・アート映画上映 ③ そのほかの特別上映(公演映像など)
<文化芸術教育>
① 青少年文化芸術プログラム(青少年が自ら映画館で映画祭を企画)
② 青少年体験プログラム(古典映画を観覧し、劇場に隠された昔の痕跡を発見する)
③ お年寄りの文化芸術プログラム
④ アーティストの協力・企画プログラム
<文化イベント>
解放後、庶民大衆の唯一の娯楽場であった映画館では、上映だけでなく演劇、サーカス、コンサートなどのメディアの集合体だった。そのような空間特性を生かし、市民のための様々な行事を企画・運営。また屋外出張上映なども企画・運営して古典映画を市民に紹介する。
<展示企画>
17館もの映画館があった映画の街、東インチョンを記憶し、記録するために、近現代の映画産業の姿を垣間見ることができる映画のポスター、映写機、フィルムなどを発掘、寄贈を受けて展示しています。劇場3階のロビーに設けられた常設展示室は、年配世代には思い出の場として、青少年たちには学習体験の場となっています。
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